2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

灰色の石の墓 La Tombe de pierre grise

それは古びた——ひどく年古りた墓だった。時代のついた墓石は灰色にくすんでいた。墓は劫を経た古森のただ中に開けた空き地にあった。樹々の幹は苔と地衣に覆われていた。その下の地面には樫の古木の高みからドングリが降り敷き、黄色い落ち葉が絨毯のように…

無情の一撃 Giroflée

僕は両親の反対を押し切って、十二歳で海に出た。不幸なことに、最初に出会ったのが意地の悪い船長だった。海の世界のあれこれなんて噂で聞いたことしかなかった僕は、八日にわたる体験ののち、自分の馬鹿さ加減をひどく悔やむことになった。「ああ」、僕は…

第二章 サント=バルブ中等学校からルイ=ル=グラン高等学校、およびソルボンヌまで/レオン・カアンのもとで/初期の習作

アンセルム長老や叔父のカアンと同じように、マルセル・シュウォッブもまたパリにやって来た。サント=バルブ校、つづいて由緒あるルイ=ル=グラン高等学校へ。高校で彼を迎えたブドール氏は、この若者の厚かましさに憤慨したものだった。地方の三年生がそ…

ヴィオレット Violette

あのね、叔父さん、年とったお爺さんだったの。とってもとっても年とってて。腰はすっかり曲がって、背中は波を打つようで、どこもかしこもそんな感じ。それで手回しオルガンを弾くの。あのね、ずっとおぼえてるわ。だって大好きだったから、手回しオルガン…