その他の短編

灰色の石の墓 La Tombe de pierre grise

それは古びた——ひどく年古りた墓だった。時代のついた墓石は灰色にくすんでいた。墓は劫を経た古森のただ中に開けた空き地にあった。樹々の幹は苔と地衣に覆われていた。その下の地面には樫の古木の高みからドングリが降り敷き、黄色い落ち葉が絨毯のように…

無情の一撃 Giroflée

僕は両親の反対を押し切って、十二歳で海に出た。不幸なことに、最初に出会ったのが意地の悪い船長だった。海の世界のあれこれなんて噂で聞いたことしかなかった僕は、八日にわたる体験ののち、自分の馬鹿さ加減をひどく悔やむことになった。「ああ」、僕は…

ヴィオレット Violette

あのね、叔父さん、年とったお爺さんだったの。とってもとっても年とってて。腰はすっかり曲がって、背中は波を打つようで、どこもかしこもそんな感じ。それで手回しオルガンを弾くの。あのね、ずっとおぼえてるわ。だって大好きだったから、手回しオルガン…

ユートピアの対話 Dialogues d'utopie

シプリアン・ダナルクは四十路にさしかかったところ。それを言われるととたんに不機嫌になる。歳なんか僕にはちっとも関係ない、世の俗事はみんなそうだがね、というのが彼の主張であった。上背は高く、痩せて日焼けした肌、目には激しい光をたたえ、鷲鼻の…

ティベリスの妻問い Les Noces du Tybre

傾きかけた陽光が彼女の歩む径となる カチュール・マンデス(『宵の明星』) ホルタの街の近郊で、ナル河はティベリス河に流れこむ。そのあいだを隔てるものは、ほんの小さな砂州とてない。まったく、ひとつの波も、ひとつの沫さえも立つことはないのだ。た…

造物神モルフィエル伝 Vie de Morphiel, démiurge

モルフィエルは、他の造物神たち同様、〈至高存在〉がその名を口にしたときに、実在の世界へと呼び出された。するとたちまち、彼はサール、トール、アロキエル、タウリエル、プタイール、そしてバロキエルと同じく天の工房にいた。この仕事部屋を司る造物神…

ラムプシニト Rampsinit

目覚めの朝に死者の腕を差し伸べた盗賊との一夜が開け、ラムプシニトス王の娘アフーリは恋に落ちた。彼女は父王に、自らの処女を捧げた男を夫としたいと申し出た。盗賊への畏敬の念にうたれた老王はこれを許し、そのうえ玉座と、石壁で固めた倉の財宝までを…